世界中でデジタル印刷ソリューションを展開するローランド ディー.ジー.が、キャディ株式会社の製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」を導入し、日本とタイの二拠点間で長年課題となっていた「情報の壁」を見事に突破しました。
開発サイクル半減のプレッシャーと「二重発注」の課題
ローランド ディー.ジー.は、市場競争の激化に直面し、大判プリンターや歯科用切削工作機の新製品開発サイクルを従来の2年以上から実質1年へと半減させる必要がありました。このスピードアップに対応するため、日本拠点は高額な特急試作を日本のメーカーに、量産をタイのメーカーに依頼する「二重発注」を余儀なくされていました。これによりスケジュールは守られたものの、年間数千万円という高額なコストが発生していたのです。
コスト削減のための分析を進めると、根本原因は「出戻りの多さ」にあることが判明。特に、日本とタイの拠点間で現場情報(不適合、製造難易度など)がスムーズに共有されず、図面の差し戻しが頻繁に発生していました。
日本とタイ、それぞれの課題をCADDiで解決
これらのリードタイム短縮とコスト削減という二つの経営課題を解決するため、ローランド ディー.ジー.は製造業AIデータプラットフォーム「CADDi」の導入を決定しました。
日本での導入が成功し、サブスクリプション更新のタイミングで、推進者である菅野氏がタイへ赴任。これを機に、タイ拠点での導入検討も始まりました。
タイ拠点では、「二重発注」の一端を担っていたことに加え、ファイル管理が個人に依存していたり、拠点間の情報共有が「人頼り」で、現地スタッフの離職によってノウハウが失われるという属人化の問題も抱えていました。
導入効果:コスト削減とリードタイム短縮、そして知見の蓄積
CADDiの導入により、日本拠点では「二重発注」による高額な特急試作費用が大幅に削減され、年間数千万円規模のコスト削減が実現する見込みです。さらに、図面の差し戻しが45%削減され、新製品立ち上げのリードタイムも1ヶ月短縮されました。サプライヤーからの指摘も減少し、試作プロセスを従来の3回から2回に削減するという大きな成果も生まれました。過去の品質情報やサプライヤーからの提案がCADDi上に「知見」として蓄積され、図面と紐づくことで、図面自体の信頼性向上にも貢献しています。
タイ拠点では、属人的なデータ保管の課題が解消され、CADDiを通じて暗黙知がデータ資産として形式知化されました。これにより、経験豊富なベテランでも把握が難しかった類似部品の発見が可能となり、現地メンバーが自らデータを活用できる基盤が構築されました。
その結果、わずか数ヶ月で58部品、年間目標500万タイバーツの倍以上ものコスト削減が見込まれるなど、年間目標を大幅に上回る本質的なコストダウン提案が多数創出されました。タイでもサプライヤーの知見に頼りきりになるのではなく、自社のデータ資産を活用し、メンバー発信でのコストダウン活動が実現しています。
グローバル展開の新たな基盤へ
Roland Digital Group (Thailand) Ltd.のProcurement Unit Executive General Managerである菅野 悟志氏は、今回の取り組みについて以下のようにコメントしています。
調達における主導権の戦略的移行
「全体最適を追求するならば、サプライヤーに最も近い現場、すなわちタイ側が調達の主導権を握るべきです。タイのサプライチェーンに関する最も鮮度が高く詳細な情報は現地側が持っているからです。調達業務が日本主導でなくても十分に回せる体制が整えば、日本側はより付加価値の高い新たな戦略的業務にリソースを集中できるようになります。私たちが目指すのは、タイ側の持つ現地の情報力と専門性を最大限に活かし、サプライヤーの選定から交渉までを段階的にタイ側に移管することです。」と菅野氏は語ります。
自立した拠点モデルとグローバル展開
また、「マザー工場」という概念にとらわれず、ノウハウや情報の蓄積・共有方法を戦略的に設計することで、現地拠点は自立し、急速に成長できると強調。「タイ拠点が自律的に業務を回せるようになれば、日本側はより高度な戦略的課題に集中することが可能になります。タイでの取り組みを、現地最適化に留めず、グローバル展開を加速させるための成功パターンと位置づけています。将来的に他地域への進出を視野に入れた際、『タイで確立した調達ノウハウは、インドでもすぐに展開できる』状態になっていれば、このデータ活用の取り組みは、地域や製品を問わず効果を発揮する本質的な価値になります」と、今後の展望を述べました。
今後の展望
ローランド ディー.ジー.の挑戦は、データという共通資産を核として、単なる拠点間の情報連携にとどまらない、グローバル製造業のあるべき姿を示しています。日本とタイ、そして将来的なインドなど他地域への展開においても、「パッケージ化されてすぐ使える資産」となった暗黙知の活用は、同社のグローバル・ビジョンを実現するための鍵となるでしょう。
製造業AIデータプラットフォームCADDiについて
CADDiは、製造業のエンジニアリングチェーン・サプライチェーン上のデータを解析・関連付け、インサイトを抽出することで、生産活動と意思決定を高度化するプロダクトです。部品調達事業での経験とAIを用いたテクノロジーを活用し、点在する経験とデータを資産に変え、競争力を高めます。
詳細は以下のリンクよりご確認ください。
キャディ株式会社について
「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに掲げるキャディ株式会社は、「製造業AIデータプラットフォームCADDi」を開発・提供するスタートアップ企業です。日本をはじめアメリカ、ベトナム、タイを含む4カ国で事業を展開し、製造業のグローバルな変革を実現しています。



